ウシュマル uxmal
メリダから南へ80kmほど。うっそうとした森の中にある、チチェン・イツァーと並び称されるマヤ文明を代表する遺跡。都市国家はこの地に7世紀頃に創建され、建築スタイルや装飾に優れたアートの都としても有名。遺跡の各神殿は神々の像で飾り立てられている。
(2017~18地球の歩き方 メキシコより)
2012年でしたよね、マヤ暦が終わる~と世界中が大騒ぎしていたのは。1999年はノストラダムスの大予言だったし、ほんと想像力豊かなバイアスがかかってしまうと架空の(想像する人には面白すぎる)世界って果てしなく広がっていくものだとつくづく思うのです。
個人的にはそういう話、大好きなので、マヤ暦もマヤ文明ももちろん昔から興味・関心は最大級。だからすっごい楽しみでした、この日が。
遺跡ツアーの拠点に選んだのはメリダ。メキシコシティからの飛行機が遅れに遅れ、日付が変わってからホテル着。朝は9時30分、時間どおりに、事前に申し込んでいた現地ツアーのガイドさんが迎えにきてくれました。
マヤ遺跡めぐりの拠点メリダ
ところでメリダってどこ? って思いますよね。私は今回の旅行で、初めてその存在を知りました(笑)。
メリダはメキシコ南東部、先っぽに有名なリゾート・カンクンがある、あのユカタン半島に位置する都市。半島の北部にユカタン州という州があって、その州都です。ユカタン州には無数のマヤ遺跡が点在しているそうで、遺跡めぐりの拠点にメリダを選ぶ人も多いのだとか。ちなみに、千円札でおなじみの野口英世先生が黄熱病の研究をしていた病院もあります。
そのメリダ周辺にあって、独特の装飾美で有名なマヤ遺跡がこの日のツアーの目的地ウシュマル。ガイドさんはワゴン車を運転しながらいろいろ説明してくれるのだけど、スペイン語と英語、二つの言語が代わる代わる出てくるために、ぼーっとしているとあっという間に置いていかれます(笑)。
そんな車にしばらく揺られた後、「この辺で一番高い場所だよ」と降ろされたのは、ユカタン州のジャングルが一望できる丘の上(カフェがある)。これがなかなか見事な光景で、複雑な地形の日本という島にいると、山も川もない真っ平らなこの風景はすっごい新鮮に映ります。
ウシュマル到着
さて、いよいよお待ちかねのウシュマル。メインゲートを入ってちょっとした坂をのぼり、突然視界がひらけた先に見えるもの、それがハイ、通称「魔法使いのピラミッド」。
このピラミッド、正面で手を叩くと、鳥の鳴き声のような反響音が返ってきます。なんかね、澄んだ音で、ちょっと神秘的。ピラミッドというと直線的なイメージがありますが、ここのピラミッドは丸みがあるんです。 横からと後ろからはこんな感じ。一種、女性的。
なぜ「魔法使い」なんて名前がついているのかというと、小人が一夜でつくったという伝説からだそうで。実際には300年くらいの間につくられた5つの神殿が積み重なっているとのことなのだけど、想像力豊かな伝説は、夢があって、記憶に残りやすい。
ピラミッドを抜けて、次に見えるのは通称「尼僧院」。足元を見たら、こんな子たちが(笑)。人もそうだけど、こういう出会いが旅する醍醐味☆
この「尼僧院」は、たくさんの小部屋のある建物が、中庭を取り囲むように建っていることから名づけられたのだそう。プウク様式という、彫刻を施した石を組み合わせているのが特徴で、中にはかわいらしいモチーフもあります。
特に建物の角に施された、ゾウの鼻みたいな装飾は独特。
これは雨神チャックと考えられているそう。・・・ここは河川のないカルスト台地。カギ鼻の神に、雨を祈るマヤの人の姿が重なります。
遺跡の敷地は結構広くて、尼僧院のアーチを抜けると、
球戯場があり、その奥には一面だけ修復されたピラミッドがあり。このピラミッドは頂上まで上ってみたのだけど、階段が相当急で、少しでも気を抜いたら・・・と下におりてくるまで、コワイ想像をしっぱなし。当時の人たちは何を思って上ったのだろう。
これは「総督の宮殿」と呼ばれる壮麗な建物。実際はここがどんな役割を担う場所だったかは分かっていないそう。美しい装飾が、ここにも隙間なくびっしり施されています。神への祈りなのか、魔除けなのか、芸術的な感覚なのか。
「総督の宮殿」の上から。向こうに頭が見えるのは「魔法使いのピラミッド」。始終、ガイドさんの説明には、「ククルカン」(マヤ神話の至高神・創造神とされる羽毛のある蛇。アステカではケツァルコアトル。「国立人類学博物館編」にもでてきました)が頻繁に登場したのだけど、それ以外はほぼ聞き取れず・・・な感じ。英語を本気で勉強しようと固く誓ったのでした。
静かな森のカバー
ランチタイムをはさんで「カバー」の遺跡へ。メリダ発のウシュマルツアーは大抵、この遺跡がセットになっています。カバーはウシュマルとうって変わって、とても静かでひと気はゼロ。でもその静けさが、かえって心にしみたりします。
この日、一生懸命、遺跡の解説をしてくれたガイドさん。その後ろの壁には、ウシュマルと同じ、カギ鼻の神が並んでいます。人の像が描かれた壁もあったりして。
お月さまと。なんか絵になる~。
旅行をしていて、いつも思うのは、世界遺産をはじめいろんなものが写真や映像になっているために、日本にいてもそれがどのようなものか姿カタチはわかる。けれど、その場の空気、温度、湿度、人の声、自然の顔は、行ってみなければわからないし、「その場」を感じて初めて「そこにある」理由がわかる(直感的なものね)、ということ。今回のマヤ遺跡では、平坦なジャングルの中での信仰や、そのために流れた血や汗が迫ってくるように感じられたのが印象的。マヤの人たちは何に幸せを感じていたのか、聞いてみたくなりました。・・・つづく
この記事へのコメントはありません。